頸椎椎間板ヘルニアとは?
頸椎椎間板ヘルニア
頸椎椎間板ヘルニアの「ヘルニア」とは、ものの中身がはみ出すことを意味します。椎間板ヘルニアとは椎間板の髄核をつつむ線維輪に裂け目ができ、そこから中身である髄核がはみ出した状態のことをいいます。例えれば饅頭(椎間板)がパンクして、あんこ(髄核)がとび出した状態です。そして後にとび出した髄核が、神経根や脊髄を圧迫してさまざまな症状がでる病気です。椎間板にある程度の内圧が保たれているからこそ「とび出す」ことになるので、40代に発症することが多いです。
代表的な症状
- 項頸部の痛み
- 肩こり
- 背中の痛み
- 手から腕にかけて走るしびれや痛み
- 手指の動きのぎこちなさ
- 歩行障害
- 排尿障害
症状が良く似ている病気
- 変形性頸椎症(症状からは区別することが難しい)
- 頸椎後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)
【外部リンク→後縦靱帯骨化症】 - 頸椎捻挫(むちうち症)
【外部リンク→外傷性頚部症候群】 - 頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)
【外部リンク→頸肩腕症候群 – Wikipedia】
肩こり、腕の痛みや手のしびれなどの原因になるその他の疾患
- 肩腕症状をきたすのもの
- 緊張性頭痛
【外部リンク→緊張型頭痛】 - 胸郭出口症候群
【外部リンク→胸郭出口症候群】 - 五十肩
【外部リンク→五十肩(肩関節周囲炎)】 - 上腕外・内上顆炎(テニス肘)
【外部リンク→上腕骨外側上顆炎】 - 手根幹症候群
【外部リンク→手根管症候群】 - 腱鞘炎など
【外部リンク→ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)】
頸椎椎間板ヘルニアの症状
頸椎椎間板ヘルニアはどんな現れ方か
症状は、まず肩こり、首の痛みなどの局所の症状として始まり、その一部には上肢の神経根症状が加わり、さらに、そのまた一部に体幹(胴)や下肢(手と腕)の脊髄症状が加わります。
このため、初期の局所症状の段階では、ただ単に寝違いの診断ですまされているものも少なくありません。頸椎には運動制限が見られ、無理に動かすと痛みが誘発されるので、診断法としていろいろな姿勢をとるテストがあります。また頸椎椎間板ヘルニアの存在する高さによって、手足に発生する痺れや痛み部位、触覚や痛覚などの知覚障害がおこる部位に、違いが見られます。
一般的にヘルニアの生じた椎間板の高さは、上から下になるにしたがって、症状は首から肩、腕の拇指側、拇指から小指、腕の小指側へと変わっていきます。例えば、右の薬指や小指に知覚障害があれば、第七頸椎と第一胸椎の間の頸椎椎間板ヘルニアと考えます。
この頸椎椎間板ヘルニアをレントゲン写真で確認することは、必ずしも容易ではありませんが、CTやMRI、さらには脊髄造影などを行えば、椎間板の盛り上がりやふくらみや脊髄の圧迫像として見ることが出来ます。
神経根症状
- 首~肩~腕~指へのしびれ感、痛み。
- 咳やクシャミ、首を後ろに反らすと肩甲骨や手指に電気が走る。
- 肩や肘、手指が思うように動かせない。筋力低下など。
椎間板症状
- 肩・首・背中が痛く重く感じる。
- 頭痛、耳鳴、目がチカチカする。
脊髄症状
- 上下肢のしびれ感(手袋や靴下を履く範囲→体幹へ広がる)、痛み
- 灼熱感、冷感
- 筋力低下
- 巧緻(こうち)運動障害(ボタンかけ、ハシの使用、筆記)
- 足が突っ張って歩きにくい、軽い筋肉痛のような違和感
- 膝がガクガクする、階段を下りるとき手すりがないと不安などの歩行障害
- 直腸膀胱障害(おしっこや便の出具合が悪い)など
※「手の脱力感」は一見脊髄症状と誤認されがちですが、正しくは神経根症状です。脊髄症状における運動障害は両手の巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい:箸が使えない、字が上手くかけないなど)と痙性歩行障害(けいせいほこうしょうがい)です。一方、神経根症状は上肢~手のしびれ、痛み、そして筋力低下が主症状です。当然ながら保存的治療に奏効しない場合に手術を考慮します。
頸椎椎間板ヘルニアの発症の原因
頚椎椎間板ヘルニアは腰椎椎間板ヘルニアに比べて発症年齢が高く、40歳以上に好発します。原因として頚椎症性変化(首の老化)を基盤に明らかな原因がなく発症します。中には、軽微な外傷(むち打ち損傷など)やスポーツ傷害をきっかけに発症することもあります。
首の骨「頚椎」は、小さな7つの骨(椎骨)が積み重なってできています。椎骨と椎骨の間には「椎間板」があり人間の体を支えるためにも、動かすためにも、重要な役割を持っています。その弾力性が、頭に加わる衝撃に対するクッション作用とともに、頸椎の前・後屈や左右への回旋運動を可能にしているのです。
頸椎は20歳を過ぎると老化が始まります。椎間板の老化とは、髄核の水分が減少することです。椎間板が水分を豊富に含んでいればクッション性も可動性も良いのですが、脱水してくると衝撃を吸収したり重い頭を支える働きも低下してくるのです。
そして椎間板が老化すると、弾力性が低下し椎間板の一部がはみ出したり(椎間板ヘルニア)、椎骨が変形して(頚部脊椎症)、脊髄や神経根を圧迫します。すると「首や肩の痛みやこり」などの症状が現れるのです。
頸椎椎間板ヘルニアの検査・診断
診断は問診を重要し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査し、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン所見では頚椎の不安定性(ずれ、グラグラする状態)や骨棘(骨のとげ)、椎間板狭小(軟骨が磨り減り、椎間板が潰れた状態)、脊柱管狭小(脊髄を取り囲んでいる骨の器が狭い状態)などを検討します。診断は診察所見とレントゲン所見にて容易に判断できますが、詳細な検討にはMRIが必要となります。尚、症例によっては脊椎・脊髄腫瘍との鑑別(見極め)が必要となる場合がありますので要注意です。
どんな病気でも、正しく診断するうえで重要な情報は、まず問診から得られます。問診のときに症状を正確にもらさず伝えられるようにメモしていくのも良いでしょう。
不安攻撃うつ病
問診で言いたいことの整理がつかず、先生にうまく伝えられないことが多いという人がいます。今回は、肩こりに伴う症状で受診をする際、診察や検査がスムーズに進むように、先生に何を伝えれば良いか、押さえておくポイントをご紹介しましょう。
(病院で肩こり治療!正しい症状の伝え方 [肩こり] All About より引用)
問診
- 症状の部位を正確に
- 痛み、こり、しびれやこわばりなどの症状の部位や範囲を正しく伝えましょう。
- 身体を指し示しながら伝えるようにします。
- 例:右の肩甲骨から右腕に痛みがあり、右の薬指から小指にかけてしびれる。など。
- 症状の程度や性質も
- どのような状態の時にしびれたり、痛んだり、痛みやしびれが増したりするのかなど。どのような痛みやしびれを感じるかなど。
- 例:筋肉痛のような軽い違和感、頭を後ろに反らせたときに電気が走るようにしびれる。など。
- 発症時期、経過を簡潔に
- いつからどのように起こり、症状は悪化しているのか、軽減しているのか、なにかきっかけはあったか。など。
視診(形や動きをみる)
- 首の格好や、頸椎や肩の動き。
- 首を痛みのある方へ傾けたまま首を反らす→上肢へ放散する痛みやしびれ→頸椎椎間板ヘルニアの疑い
- 交通事故110番_頚・腰部捻挫の徹底研究:スパーリングテスト
- 肩関節が痛みで十分に動かせない→五十肩など
触診(押してみる、触れてみる、圧痛点をみる)
- 肩や腕、指に痛みがあり、その部分(圧痛点)を押して痛みが増せば、その部位に病変があることになる。
- 病例:テニス肘、腱鞘炎、五十肩、手根幹症候群など。
しびれやこわばり、脱力などの症状がある場合
- 打鍵器(柔らかいハンマー)による腱反射テスト
- 脚気の検査などでよく行われる検査です。膝や肘、手首などをたたいて腱反射を見たり,柄の部分で足をこすって病的反射を見ます。
- 虫ピンや毛筆を用いた知覚検査
- 筋肉のやせをみたり、握力検査などによる脱力の程度の測定
- 足や腕の関節を曲げたりして、医師と患者で力比べをするような検査。
- 10秒テスト:手を握る開くの動作が、10秒の間に何回出来るか数える。
- 15回以下なら陽性、正常は20~30回程度。
画像検査
X線検査、さらに必要があればMRIやCTによる画像検査がおこなわれます。椎間板や脊髄などはMRIで鮮明に映し出されます。
ところでCTってなんだか知ってらっしゃいますか?病院で、『じゃあ、詳しく検査するためにCTとりましょうね~』とか『じゃあ、MRIってとってみますか?』なんていわれたことがある方もいらっしゃると思いますが『そもそもCTってなに?』『MRIと何が違うの?』なんてご質問を良くいただきます。
(CT、MRIってなあに? – [女性の健康]All About より引用)
血液検査
ほかの病気が疑われる場合はおこなわれます。
治療的診断
対処療法をおこないながら、効果の有無を判断して病変部を診断して確定していく。テニス肘、腱鞘炎、五十肩、手根幹症候群などでは、それぞれの圧痛点へ局所麻酔剤を注射するとすぐに効果が現れるので診断が確定します。
頸椎椎間板ヘルニアの上肢への放散痛には、神経根ブロックや硬膜外ブロックが効くことで確定されます。
また頸椎カラーなどの固定用装具を着用し、首や肩、背中や腕などの症状が軽減したります。これらのさまざまな検査によって総合的に診断されます。画像所見(ヘルニアがあるという事にこだわらず)だけに頼らず、症状と経過を中心に判断し、画像検査はそれを裏付ける補助診断法として用いるべきです。
ヘルニアによる脊髄の圧迫による中枢性麻痺が起きている場合は、筋の緊張が高まる痙性麻痺となります。具体的には深部腱反射の亢進(いつもよりビクンとなる反応が大きくなる)、膝クローヌスや足クローヌスの出現、そして広範囲の知覚異常や筋力低下や筋萎縮が認められ、更に皮膚表在反射の消失、ホフマン、トレムナー、ワルテンベルク徴候等の上肢の病的反射やバビンスキー反射に代表される下肢の病的反射の出現と続いて来るのです。重症になると直腸・膀胱障害が出現し、自力での排尿排便が困難となります。
- 腱反射などの神経学的検査はこちらのサイトに詳細があります。
- 神経学的所見 臨床実習
- 交通事故110番_頚・腰部捻挫の徹底研究:頚部の神経症状
- 交通事故110番_交通事故外傷と後遺障害:神経学的検査
「病院っていうと、身構えてしまって、話したいことの半分も言えなかった」なんて言う経験ありませんか?たしかに、病院ってとっても非日常的な印象がして、怖いイメージもありますよね。でも、せっかく長い時間待って、診察を受けるのだったら、やっぱりそれなりにちゃんと、納得のゆく診察を受けたいですよね。今回は診察する側からのおはなし。何かの参考になればいいなとおもいます。
(病院への上手なかかりかた – [女性の健康]All About より引用)
頸椎椎間板ヘルニアの治療
まずは安静が大切
どんな病気も治療の基本は「安静」です。それは頸椎の疾患である頸椎椎間板ヘルニアでは特に重要です。安静にするということは生体のもつ自己修復再生能力によって身体の故障した部位がしだいに修復されていくからです。
安静にすると、痛みを起こさせる刺激を抑え、神経そのものの過敏状態を鎮静されるのも効果的ですので、症状を抑える効果があるのです。これは痛みだけではなく、しびれや運動神経の麻痺にもある程度あてはまります。
治療は、局所と上肢の症状に対しては徹底した保存療法が効果をそうします。保存療法の基本は、「頚椎に負担をかけないこと」です。
薬について
急性で症状が強いときには、少々の胃腸障害やむくみなどの副作用があっても効き目の強いものを短期間だけ、症状がそれほど強くないときには、効き目は弱くても副作用の少ないものを服用します。
心房性不整脈のためのスイッチングモード
- 非ステロイド系抗炎症剤
- 鎮静と消炎のはたらき:痛みを起こしている炎症を抑え、鎮静効果を発揮します。内服薬ののほかに、座薬の形もあるので胃腸の弱い人にも処方できます。 副作用:消化管粘膜障害や血小板機能障害、腎機能障害
- 筋弛緩剤
- 痛みの発生により、筋肉が異常に緊張して患部の血行障害が起こります。その結果、発痛物質(痛みを誘発する物質)が患部に停滞し、さらに筋肉の緊張が亢進し痛みの悪循環を繰り返す事になります。筋弛緩剤はこの様な悪循環を取り除くために使用されます。手足のしびれやこわばりなどの症状の緩和。 鎮静作用が強くあらわれて眠気が出る人は、運転を控えたり、飲み方をコントロールする必要があります。
- ビタミンB剤
- 末梢神経障害(手足のしびれ、感触の麻痺、ピリピリする痛み)に効果があります。
- 抗不安剤
- 痛みが長期にわたって慢性化し「痛みの悪循環」におちいった場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤を投与することがあります。 抗不安作用や鎮静作用、筋緊張緩和作用、心身安定化作用、抗うつ作用、自律神経安定化作用など。
温湿布と冷湿布の違いは? 温湿布と冷湿布は肩こりや腰痛の時に手軽に使えるアイテムとしてお馴染みですね。温シップと冷シップの違いについてお話しましょう。
(温湿布と冷湿布の違いは? – [肩こり] All About より引用)
リハビリテーション
- 温熱療法
- 極超短波療法(マイクロウエーブ)や超短波療法、超音波療法、水治療法(気泡浴・過流浴)、レーザー光線療法などの機具を利用して、局所の血行を改善させ、筋肉の緊張を取り除き、発痛物質(痛みを誘発する物質)を取り除くことにより痛みを緩和する治療法です。又、筋肉や靭帯、腱、関節包に多量に含まれるコラーゲンを弛緩させ、関節が固まって動きが悪くなった状態を改善させる目的としても行われます。
- 頚椎牽引療法
- 首の牽引と休止を繰り返すことにより、筋肉や筋膜由来の痛みや頚椎症性変化によって起こる痛み、シビレを緩和する治療法
- 頚部のストレッチング
- 屈筋群・伸筋群・側屈筋群・回旋筋群のストレッチからなります。ストレッチは勢いをつけず、呼吸を楽にし、痛みのない程度で、ゆっくりと筋肉を伸ばし、心地よい緊張感を維持する程度に行います。各ストレッチを20秒間行い、5回をワンセットとし、一日に3セット行います。
- 筋力強化訓練
- 特殊な器具を使用せず、関節を動かさず、同じ姿勢で筋肉に一定の力を入れて、静的に行う筋力強化訓練を行います。頚部を動かさずに、最大の筋力で目的の筋肉を5秒間収縮させ、数秒間休憩いたします。10回をワンセットとし、一日に3セット行います。
神経ブロック療法…痛みの悪循環を断つ
神経ブロックとは整形外科、ペインクリニックが専門とする特殊なブロック注射療法で、痛みの原因となる知覚神経線維や運動神経線維、交感神経線維の異常な緊張や興奮を取り除き、その神経が支配している領域の痛みをブロックして止めるための注射です。使用する薬剤は局所麻酔剤ですが、炎症反応が強い症例では抗炎症剤を加えて行ないます。
「血管を広げ血液循環を良くし神経の緊張を取る」 という局所麻酔薬のもう一つの作用を使い、治療するということです。 この薬が神経の枝にジワジワと効いて局所で起こっている痛みの悪循環を断ち痛んだ組織の回復を促し、結果として、痛みやしびれなどの治療に効果を上げます
- 知覚神経線維がブロックされると患部の痛みが緩和される。
- 運動神経線維がブロックされると筋弛緩作用がもたらされる。
- 交感神経がブロックされると末梢の血管が拡張し血行が改善される。
- 星状神経節ブロック
- 星状神経節が支配している臓器の交感神経の機能を抑え、痛みを抑える治療法。星状神経節をブロックすると、交感神経系の異常な興奮が抑えられ、血管が拡張し、血液の循環が改善され、痛みが緩和します。
- 硬膜外ブロック
- 知覚神経、運動神経、交感神経をすべてブロックする治療法
- 神経根ブロック
- 知覚神経と運動神経をブロックする治療法
関連リンク
- 神経ブロック注射の作用・効果・副作用
- ペインクリニック科で行われる、ブロック注射治療の基本を説明します。ブロック注射治療の安全性や高い治療効果などのメリット、副作用、費用などを詳しく解説。ブロック注射の中でも上半身の病気に行われる「星状神経節ブロック」と、下半身の病気に行われる「腰部硬膜外神経ブロック」について、わかりやすく解説します。
- 患者さんからよくある質問…神経ブロック注射Q&A
- ブロック注射の効果、副作用、費用、時間など、よくある質問をまとめました。ブロック注射治療の実際を具体的に説明し、初めてでも安心して受けられるよう、Q&A形式で解説しています。
痛みの悪循環
痛みが神経を通して繰り返し体(脳や脊髄)に伝わると、体は防御反応として交感神経(自律神経)が緊張し、さらに交感神経が調整している血管を収縮させ、筋肉が緊張します。こうなると、緊張した組織への血流が悪くなり、十分な酸素が運び込まれなくなります。また、組織には痛みの物質を含んだ老廃物が滞ります。こうした不健康な状況が続くと、この部位の痛みはさらに増していきます。ここに痛みの悪循環ができあがるのです。
多くの場合、保存療法だけで症状は治まりますが、徹底した保存的治療を行っても、痛みが強かったり、歩行障害、箸が使えない、字が上手く書けないなどの日常生活を高度に制限する麻痺があるときには、手術療法を行います。
腰の椎間板ヘルニアと違って、頸椎部では、脊髄の麻痺を漫然と放置すると、手術療法でも回復不能な障害を残してしまうので、手術治療のタイミングの判断は重要です。手術は、通常では首の前側から椎体を展開して椎間板ヘルニアを切り取り、椎間板を固定する方法(前方除圧固定術)がとられます。手術時間は2時間程度で回復が順調であれば、2週間ほどで退院できる場合もあります。
頸椎のはたらき
頸椎のはたらき
極度の疲労、咳
頸椎(けいつい)は椎骨の一部で、重い頭を支え、首を動かすための身体のバックボーン。からだにとって非常に大切で壊れやすい「脊髄」を保護する役目をしています。
頸椎柱(首の骨)は七個の頸椎から成り立っています。上から第一頸椎、第二頸椎…第七頸椎までが首の骨です。上位頸椎(第一頸椎、第二頸椎)は他の五つの骨と異なる形態をしており、頭の左右への回旋運動を行っています。第一頸椎と第二頸椎の間にある関節(環軸関節)は、頸椎の中で最も運動が起こりやすい。第一頸椎(環椎)はリングのような形をしていて頭蓋骨をのせている頸椎です。
第二頸椎(軸椎 じくつい)には椎体上面から垂直に伸びる歯突起があり、後上方から見ると人が足を組んで座っている姿に見えるため「のど仏」と呼ばれたりしています。
第三頸椎から第七頸椎は、ほぼ同じ形態と働きをしていますが、下にある椎体ほど大きく、特に第七頸椎は長く大きな棘突起を持っています。前方には椎体と椎間板があり、後方には椎間関節があります。各頸椎の節が蛇腹のようになって前後への曲げ伸ばし、左右への傾け、左右へのねじりが出来るようになっています。
脊柱管について
脊髄が通る管は、椎体の後に椎弓がトンネル状にくっついていて、これを脊柱管(脊柱管)とよびます。脊柱管のうち首の部分が頸部脊柱管といいます。
脊柱管の後方には棘突起、両外側には横突起、前方には椎体があり、脊柱管の体積のうち大部分は脊髄が占めています。脊柱管の断面を円とみなしたとき、中心のところにあるのが脊髄で、その周りでは中心に近いほうから順に軟膜、クモ膜下腔、クモ膜、硬膜、内椎骨静脈叢を入れた結合組織、椎骨の骨膜が層をなして脊髄を取り囲んでいます。
頸部脊柱管は、生まれつき広い人と狭い人とがいます。脊柱管が広い人の脊髄はゆったりと脊柱管の中に納まっていられますが、脊柱管の狭い人の脊髄は常に窮屈な状態を強いられています。
広い人では少々のヘルニアがあっても、脊髄は逃げる余裕があるのに対して、狭い人ではたちまち精髄は圧迫され、手足のシビレ、こわばりなどの症状が出てしまうのです。脊柱管の広さは、症状の出やすさの重要な根拠となるほかに、その後の経過を占う所見ともなります。狭い人ではどうしても症状は進行しやすく、重くなりやすく、首のケガも大事になりやすいのです。
脊髄(頸髄)のはたらき
頸椎の前方部分と後方部分の中間にある脊柱管。その中に大切に納まっているのが脊髄。その脊髄の頸椎部分(首の部分)を「頸髄」とよびます。
脊髄も脊椎と同じように頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、と分けて呼ばれます。頸椎からは腕や手に分布する末梢神経にいく上腕神経叢が枝分かれし、本体である神経の束は胸髄以下へと連続します。胸髄からは肋間神経が、腰髄や仙髄からは下肢や臀部にいく神経が、さらに仙髄からは排尿や排便の機能を司る神経が、それぞれ枝分かれします。
ですので頸椎がヘルニアなどで圧迫されると、上半身は肩や腕や手から、下方では膀胱や肛門に至るまで全身に麻痺が起こります。
脊髄の機能は3つあり手術の対象となる脊椎や脊髄の病気やケガでは、この3つともだいたい並行して障害されます。
- 運動神経が筋肉を収縮させる運動
- 感覚神経が温・痛覚や触覚などを感じとる知覚
- 1と2の両神経から起こす反射
神経根について
硬膜管の中の脊髄から神経が枝分かれして椎間孔を通って脊柱管から出ていく、その枝分かれした部分を「神経根」といいます。
脊椎の病気では脊髄が圧迫されるのと同様に、神経根も圧迫されて刺激を受けます。圧迫が軽いと炎症状態となり、マヒよりも痛みを感じます。神経根性疼痛といい末梢神経に沿った痛み(神経痛)を起こします。神経根への圧迫が強く、長く続いて神経線維そのものがやられてしまうと今度は神経根性のマヒを起こしてきます。
マヒが強くなる前の刺激状態である「痛みの段階」に適切な処置を受けると回復がよいと言われています。
神経根症状
- 首~肩~腕~指へのしびれ感、痛み。
- 咳やクシャミ、首を後ろに反らすと肩甲骨や手指に電気が走る。
- 肩や肘、手指が思うように動かせない。筋力低下など。
しびれについて
外から皮膚に刺激を与えることでわかる感覚の障害
知覚鈍麻(低下)、知覚脱出
からだの表面には表在知覚といわれる触覚、温・冷覚、痛覚があり、それらがわかりにくくなったり、わからなくなった状態を知覚鈍麻・知覚脱出といいます。
これを診断するには
- 触覚
筆先を軽く押しつけてみる(横に動かすと感じが鋭敏になるので押すだけにする) - 痛覚
ルーレット(洋裁道具のひとつ、柄の先に歯車のついたもの)を転がしてみる。
知覚過敏、錯知覚
外界からの刺激を正常以上に強く感じたり、さわっているだけなのに痛いと感じたりする不快な感覚です。正座を解いた後や、神経損傷の回復期や、脊髄空洞症、脊髄癆などの病気で経験されるものです。 患者自身がジンジン感、ビリビリ感など自覚する場合
異常知覚
外からの刺激がないのにしびれを自覚するもので、かゆい 、ムズムズする、痛痒い、ビリビリ、ヒリヒリ、ジンジンすると表現されることが多い不快な感覚です。これらは単独ではなく、重なって感じられたり、動かない(麻痺)や、痛みや冷たい(循環障害)などのしびれ以外の症状を伴うことが多いです。
しびれや感覚の鈍さだけでなく、筋肉の落ちや動きの悪さや脱力など運動神経の障害をともなっているか否かが、整形外科では治療を要するしびれと、放っておいてよいしびれとの分かれ目となります。
関連リンク
- 帝京大学健康ステーション>神経内科
- 整形外科、内科、手の外科などさまざまな科を受診しても原因がわからなかった、指先にしびれや筋力低下のある女性の問診や触診、筋電図検査などの様子を例にとりながらしびれの原因を突き止め適切な受診科へと導くまでの様子を動画で見られます。
- >#111 痛みの相談治療室
- 肩から手にシビレのある患者さんの治療の様子を動画で見られます。
中枢性のしびれ
脊髄障害によるしびれ
脊髄神経は、末梢神経の分布とはまた別に、それぞれ一定の皮膚領域と関連しています。脊髄がある位置で障害されると、そのレベルあるいはそれ以下の領域の感覚が障害されます。ここで、痛覚・温冷覚と触覚・深部覚は脊髄内で伝導路が異なるため、脊髄のどこが侵されたかによって感覚障害の内容が異なってきます。指の動きが鈍い、箸で食事がしにくい。つまづきやすいなどの症状が伴います。
頸椎からくるしびれとこわばりの特徴
- 頸椎に負担をかけたとき(首を後ろに反る、深く頷く、起床時)に手や足のしびれが出たり、強くなったりする。
- 負担を軽くするとしびれが軽減する。
- 指先、特に親指や小指から始まる一側性のしびれ(神経根の圧迫が原因)
- 原因として
- 脊椎の変形(頚椎症、腰椎症)
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- 後縦靱帯骨化症
- 脊髄炎
- 脱髄疾患(多発性硬化症ほか)
- 慢性関節リウマチ
- 血管障害
- 頚髄腫瘍
- 透析を受けている方では破壊性頚椎関節症など
- 外傷など
これらの診断には、脊椎 X線写真、脊髄MRI、脊髄造影、髄液検査などが用いられます。
末梢性のしびれ
末梢神経は、体全体の皮膚に分布しています。1本または数本の末梢神経が外傷、圧迫などで物理的な障害を受けた場合、その支配神経領域に一致して感覚鈍麻などが認められます。それぞれ絞扼部をたたくとしびれている所に向かって異常知覚が走るのも特徴です。
- 原因として
- 胸郭出ロ症候群
- 手根管症候群
- 肘部管症候群
- 尺骨神経麻痺
- 外側大腿皮神経麻痺
- 頚椎椎間板ヘルニアの神経根圧迫型
- 末梢神経が広範に侵される多発神経炎
- 全身性の内科的疾患(糖尿病、膠原病、ビタミン欠乏など)
- 中毒(薬物、有機溶剤など)
- 感染症、悪性腫瘍など
痺れは四肢末端部に障害が強く、手袋および靴下を身に付けたような部分に症状が出ます。しびれの分布から末梢神経障害が疑われる場合、末梢神経伝導速度の測定、針筋電図あるいは神経生検などを施行して、障害の有無、重症度などを検討し、原因診断や治療効果・予後の判定に役立てます。
脳幹、視床、大脳障害によるしびれ
感覚の伝導路は、脊髄を経由して視床に達するまでに左右交叉するため、通常、視床、大脳の障害では、病変のある側と反対側の半身(顔面を含む)の感覚低下をきたします。例えば、左大脳半球に脳梗塞があると、右半身がしびれます。なお、脳幹に病変がある場合には、顔面は病変と同側がしびれることがあります。
- 原因として
- 脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)が最も多い
- 腫瘍、脳炎など
頭部 CT、頭部MRI、脳血管撮影、髄液検査などで診断されます。
その他の原因によるしびれ
- 血液の循環障害によるしびれ(閉塞性動脈硬化症など)
- 症状として四肢末梢の異常感覚に加え、冷感や皮膚色の変化および末梢動脈の拍動減弱などがみられます。
- 精神的なストレス(心因性)によるしびれ
- 感覚障害の範囲が神経の分布に一致しないという特徴があります。
しびれの治療
- ビタミン剤(B1、B12など)
神経線維の栄養補給・再生促進のために用います - 血管拡張剤
神経栄養血管の循環改善を目的に用います
症状が強いときや痛みを伴うとき
- 鎮痛剤
- 抗痙攣剤
- 抗うつ剤(SSRIなど)
- 理学療法や神経ブロック
外傷・圧迫性のものでは、外科的な治療が必要となることもあり、糖尿病など全身性の疾患に合併するものや脳疾患では、その原疾患の治療が最も重要となります。また、血中の自己抗体などの関与する免疫性の疾患では、副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の投与、血漿交換などを行います。しびれをきたす原因のなかには、診断・治療に緊急を要するものもあり、専門医療機関への受診をおすすめします。
運動障害・麻痺について
頸椎椎間板ヘルニアによる手足の運動障害・麻痺
脳、背骨の中を通っている脊髄、または脊髄から枝分かれしている末梢神経(神経根)がヘルニアによって圧迫され麻痺が起こります。、頚椎症、後縦靭帯骨化症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などで起こります。
手指の巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)
箸を使いにくくなった、ボタン掛けがしにくくなった、財布から硬貨を取り出しにくくなった、字を書くのが下手になった、などの手指の動きが思うようにならなくなる症状は、手指の巧緻運動障害といわれ、麻痺の一つです。
筋力低下
また、肩を挙げたり、肘を曲げたりする力が弱くなった、握力が弱くなった、などの筋肉の力が弱くなる症状。
運動麻痺
歩くとき足が突っ張る感じがする、走るのが不安定でよろける、階段を下りる時に手すりが必要となった、つま先立ちができにくくなった、スリッパが抜けやすくなった、などの症状。
※痙性麻痺
脊髄の神経細胞は脳との連絡を断たれると、反射が亢進し、徐々に過剰に活性化するようになる。皮膚への接触や刺激、筋肉や膀胱の伸張などの単純なことでも、コントロールできないような筋肉の反射性収縮が起こることがある。
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