知っているようで知らない蒸気について詳しく説明しています。
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配管で発生するドレン量
スチームトラップを選定する上で重要な要素に、ドレン排出能力があります。蒸気輸送配管のドレン抜きとして使用される、スチームトラップに必要なドレン排出能力はどのくらいでしょうか。
まず、「配管からのドレン排除 前編(ドレンの取出し方)」で触れた通り、基本的には蒸気輸送配管30mから50mごとにスチームトラップは設置されるべきなので、1台のスチームトラップが担当する配管の長さは長くても50mになります。
蒸気輸送配管で生じるドレンには、以下の2通りがあり、
- 蒸気送気初期に配管を昇温させるために消費された蒸気によるドレン
- 定常運転中の放散熱量により蒸気が凝縮して発生するドレン
配管長さを50mとしてそれぞれ計算してみます。
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遺伝形質のpersrsonality障害
蒸気送気初期のドレン量の計算
STPG sch40 50Aの配管1mの重量は約5.4[kg]です。炭素鋼の比熱は約0.46[kJ/kg・K]ですので、1.0[MPaG]蒸気(184℃)を送気前温度10℃の配管に通気して、飽和温度に上昇するまでに消費される蒸気量は、
必要熱量=質量×比熱×温度差×配管長さ
に当てはめると以下になります。
5.4[kg]×0.46[kJ/kg・K]×(184-10)[K]×50[m]=21,610[kJ]
昇温のために消費される1.0[MPaG]蒸気の潜熱は約2,000[kJ/kg]ですので、この昇温に必要な蒸気量は、
21610[kJ]÷2000[kJ/kg]=10.8[kg]
この昇温をX分かけて行う際のドレン流量は、
10.8[kg]÷(X/60)[h]
となります。例えば15分で昇温する場合は、約43[kg/h]の流量となりますので、これを満たす排出能力のスチームトラップを選定する必要があります。
このように送気初期のドレン量は鉄の重さ(配管径と長さ)に比例することがわかります。同じ条件で計算した場合、80A配管50mではドレン流量は約90[kg/h]に、100A配管50mでは約127[kg/h]になります。
浮腫、血漿タンパク質
蒸気送気初期のドレン量と鉄の重さ(配管径と長さ)の比較
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定常運転中のドレン量の計算
一方、定常運転時の放散熱量によるドレン発生量は、配管表面から大気への放散熱量によって決まります。
詳しい計算式は割愛しますが、50A配管にロックウール断熱材を厚み50mmで断熱施工した場合、放散熱量は約52[W/h・m]ですので、長さ50mでは約2,600[W/h]となり、1MPaG蒸気約4.7kgに相当します。放散熱量を減らすために断熱施工しているので当然ですが、小さな値です。
配管からの放散熱量はJIS A 9501の「保温保冷工事施工標準」の解説表にも参考値が記載されていますので、これを使用することもできます。
蒸気送気初期と定常運転時のドレン量の比較
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不安のABCモデル
蒸気配管に設置するスチームトラップの能力
前述の通り、最もドレン量が多くなるのはスタートアップ時に限定されます。普段は連続運転でありスタートアップは年に数回しかないという場合は、スチームトラップの排出能力は定常運転時のドレン量に合わせ、スタートアップ時はバイパス弁を操作してドレンを排出するのも一つの方法です。バイパスバルブについては蒸気のお話「バイパスバルブ」でも取り上げています。
スタートアップは毎日のことだから、毎回バイパス操作をするのは難しい・・・ということでしたら、少ドレン時のシール性能に優れていながら大きな排出能力を持つトラップを使用する方法、少ドレン時のシール性能に優れた小型トラップを複数台並列設置する方法などがあります。
少ドレン時のシール性能が優れたトラップで初期の大量ドレンをカバーする方法
蒸気輸送配管が縦になる部分は、ドレンが逆流してくることを想定して、その量も見越したスチームトラップ能力を確保する必要があります。特に、蒸気ヘッダーは複数の配管が分岐して縦に伸びていきますので、それらの縦管部分のドレンは、下方に落ちてくると考えておかなければなりません。
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